不動産に投資したいと思っても、物件を買うことと、上場REITの投資口を買うことでは、必要なお金も管理の手間も違います。まず持ち方を選び、個別のREITを調べる場合は、分配金利回りより先に「どんな物件から収入を得て、どのように借り入れているか」を確認しましょう。
この記事では、日本の取引所に上場するREITを自己資金で現物保有する場合を扱います。大和証券オフィス投資法人(8976)、日本プロロジスリート投資法人(3283)、国内REITをまとめて保有するETFの1343を、資料の読み方の例に使います。おすすめ銘柄のランキングではなく、購入を勧めるものでもありません。
物件を管理するのか 投資口を持つのか
REITは、投資家から集めた資金などで不動産を保有・運用する仕組みです。個別のJ-REITでは投資法人の投資口を持ち、取引所で売買します。自分が物件の所有者として賃貸契約や修繕を決める実物投資とは分けて考えます。JPXのREIT概要
| 持ち方 | 自分で選ぶもの | 継続して確認すること | 換金するとき |
|---|---|---|---|
| 実物不動産 | 個別の物件、管理会社、借入条件など | 空室、修繕、管理契約、返済、税金 | 買主を探し、契約・引渡し・残債返済などを進める |
| 個別の上場REIT | 投資法人と投資口数 | 用途・地域の集中、テナント、借入、分配方針 | 取引所で投資口を売る。希望価格で売れる保証はない |
| REIT ETF | 対象指数や運用方針が合うETF | 組入対象、費用、指数への追随、市場価格と基準価額 | 取引所で受益権を売る。売買単位と板の数量も確認 |
| REITを組み入れる非上場投信 | 国内・海外の範囲、配分、運用・分配方針 | 信託報酬などの費用、積立・再投資の条件 | 販売会社に換金を申し込む。申込日、約定日、受渡日を確認 |
物件の運営に関わるつもりがなく、特定の投資法人を継続して調べる負担も減らしたいなら、複数のREITを組み入れるETFや投信が比較候補になります。ただし、本数をまとめても不動産市場や金利の影響がなくなるわけではありません。毎月一定額を積み立てたい場合は、取引口数ではなく金額で設定できる非上場投信の条件も確認します。資産運用業協会のREITガイド、1343の交付目論見書
近く使うお金を確保できていない、分配金が減ると生活費が足りなくなる、価格が下がったときにすぐ売らざるを得ない場合は、持ち方の比較までで止める選択もあります。すでにバランス型投信などでREITを持っていないかも確認しましょう。
実物物件の収支は、表面利回りから手元に残るお金までで扱っています。本稿では、その架空の家賃収支をREITの分配金に置き換えて計算しません。
分配金利回りを物件の利回りと並べない
同じ「年5%」でも、何を何で割ったかによって意味が変わります。
| 表示 | 分子と分母の例 | そこからは分からないこと |
|---|---|---|
| 物件の表面利回り | 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 | 空室、管理・修繕、取得費、借入返済などを引いた手取り |
| REITの予想分配金利回り | 年間の予想分配金 ÷ ある時点の投資口価格 | 分配金の確定額、売却損益、投資家ごとの税引後成果 |
| ETFの分配金利回り | 過去の分配金合計など ÷ 市場価格または基準価額 | 将来の分配額。提供元によって計算条件も違う |
たとえば、年間予想分配金が5,000円、投資口価格が10万円なら予想利回りは5%です。価格だけが8万円に下がると6.25%になります。これは説明用の架空例で、分配金が増えたわけではありません。市場が減配や事業環境の悪化を見込んでいる可能性も調べます。JPXのREIT概要、日本プライムリアルティのリスク説明
年間予想は、半期予想を単純に2倍しているのか、次の2期を合計しているのかを確かめます。投資口分割がある場合は、分配金と価格の口数基準もそろえます。ETFの実績利回りとREITの予想利回りを、同じ条件の数字として順位付けしないでください。
二つのREITで用途 稼働 借入を読む
ここでは、オフィスと物流施設という異なる用途に特化した2法人を選びました。市場全体から優秀な2銘柄を選んだ表ではありません。稼働率・期末財務・確定分配金は、同じ2026年5月期、2025年12月1日〜2026年5月31日の実績を使います。地域構成は資料内の基準日が異なるため、各欄に日付を残します。
| 比較項目 | 大和証券オフィス 8976 | 日本プロロジスリート 3283 |
|---|---|---|
| 主な用途 | オフィス | 物流施設 |
| 地域の構成例 取得価格ベース | 東京主要5区81.5%。2026年7月17日時点 | 関西33.2%、圏央道26.1%、国道16号18.9%など。2026年5月31日時点 |
| 2026年5月期の期中平均稼働率 | 98.9% | 98.0% |
| 期末の簿価ベースのLTV | 46.8% | 40.5% |
| 期末の鑑定含み損益を反映するLTV | 35.9% | 28.5% |
| 期末の固定金利の比率 | 50.2% | 93.2% |
| 期末の平均残存年数 | 4.0年 | 4.1年 |
出典:大和証券オフィスの2026年5月期決算説明資料の25・26・34・35ページ、日本プロロジスリートの同決算説明資料の34・41ページと注記。地域構成は基準日も地域区分も異なり、同一時点・同一地理区分の割合を比べる行ではありません。稼働率は同じ期間の各社公表値で、集計方法まで同一とは限りません。固定金利の比率は各社開示の有利子負債に関する値です。
用途と地域は、収入が減るきっかけを考えるために読みます。 オフィスなら企業の移転・縮小や契約更新、物流施設なら大口テナントの退去や周辺の供給、住宅なら入退去、ホテルなら宿泊需要や賃料契約の形が確認の入口になります。用途が違っても、同じ地域への集中や災害による損失は残ります。保有物件数だけを見て「十分に分散している」と決めず、主要物件・上位テナントの比率まで進みましょう。資産運用業協会の選択ポイント、J-REITが持つリスク
稼働率は、期末の一日と期中平均を混ぜないことが先です。 大和証券オフィスには期末99.1%という別の値もありますが、上表では期中平均98.9%を採用しています。契約面積ベースの稼働が高くても、賃料を免除するフリーレントや修繕費などの影響は別に残ります。稼働率だけでなく、賃料収入、更新・解約予定、物件ごとの状況も確認します。大和証券オフィス決算資料の5・35ページ、日本プロロジスリートのポートフォリオ情報
LTVは借入依存度を見る指標ですが、分母が違えば数値も変わります。 上表の簿価ベースは有利子負債を総資産で割ったものです。鑑定含み損益を反映する行は、総資産に不動産の鑑定評価額と帳簿価額との差を加えて計算します。大和証券オフィスでは「時価LTV」、日本プロロジスリートでは「鑑定LTV」という名称です。別定義の数値を横に並べないようにします。両社決算資料のLTV定義、日本プロロジスリートの財務情報
低いLTVや高い固定金利比率だけで、安全性の順位は決められません。固定金利でも借換え時には条件が変わり、平均残存年数が似ていても特定の年に返済が集中している場合があります。返済期限の一覧と資金調達の開示を読み、金利上昇や資産評価の下落が重なった場合を考えます。自分が借金をせず現物で買っていても、投資法人の借入は分配金や投資口価格に影響します。大和証券オフィスの借入金一覧、日本プライムリアルティの金利リスク説明
分配金は金額より先に原資と対象期を確かめる
以下は1口当たりの税引前金額です。2法人の1口の大きさも市場価格も違うため、金額の多さを収益性の順位に使えません。
| 確認する数値 | 大和証券オフィス 8976 | 日本プロロジスリート 3283 |
|---|---|---|
| 2026年5月期の確定分配金 | 7,630円 | 合計1,928円。利益分配1,716円と利益超過分配212円 |
| 2026年11月期の会社予想 | 7,170円 | 合計1,971円。利益分配1,914円と利益超過分配57円 |
| 上記予想の発表・基準日 | 2026年7月17日現在 | 2026年8月28日現在の修正予想 |
出典:大和証券オフィスの分配金情報、日本プロロジスリートの分配金情報。確定分は2025年12月1日〜2026年5月31日の6か月、予想分は2026年6月1日〜11月30日の6か月です。予想は受取額の約束ではなく、今後変更される可能性があります。
分配金には、日々の賃貸運用から生じる利益だけでなく、物件売却益や内部留保の取崩しなどが関わることがあります。翌期も同じ額を受け取れると考える前に、決算資料の増減要因と予想の前提を読みます。
日本プロロジスリートの2026年5月期の利益超過分配212円は、同法人の説明では資本の払戻しです。通常の利益分配と同じものとして扱わず、取得価額の調整や税務上の扱いを確認します。本稿では個々の口座の税額を計算しません。第27期利益超過分配金に関する説明
大和証券オフィスは、2026年12月1日付で1口を4口に分割する予定です。公式ページの2027年5月期予想1,800円は分割後の1口当たりで、分割前に換算すると7,200円に相当します。7,170円から1,800円へ約4分の1に減配する、とは読めません。価格、NAV、過去の分配金も、同じ口数基準に直してから比較します。同法人決算資料の10ページと注記
NAV倍率が1倍未満でも利益は確定しない
個別REITのNAVは、保有不動産の鑑定評価を反映した純資産価値を見るための指標です。一般的には、分配金総額を除いた純資産に不動産の含み損益を加え、投資口数で割って1口当たりNAVを求めます。具体的な定義は発行体資料で確認します。NAV倍率は「投資口価格 ÷ 1口当たりNAV」です。東証JリートviewのNAV解説
説明用に、投資口価格10万円、1口当たりNAV12万5,000円なら0.8倍です。しかし、0.8倍だから2万円や2万5,000円を確実に得られるわけではありません。鑑定評価は売却代金の保証ではなく、評価の基準日も市場価格の日付と異なります。金利、賃料、修繕、売却費用などの見通しも判断に関わります。
大和証券オフィスが公表した2026年5月期末の1口当たりNAVは418,773円です。これはその価格で売却できるという意味ではなく、10月の市場価格と比べる場合にも「資産評価は5月末」と残して読みます。投資口分割後の価格に、この分割前のNAVをそのまま当てはめないことも必要です。同法人決算資料の35ページ
REIT ETFなら何を追加で確認するか
個別REITを選ぶ代わりに、複数の投資口をまとめて持つ方法もあります。例として1343「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」を見ます。国内REIT ETF全体の比較や、最安商品の選定ではありません。
| 1343の確認項目 | 公式資料で確認した内容 |
|---|---|
| 対象指数 | 東証REIT指数 配当込み。浮動株ベースの時価総額加重型 |
| 取引所の売買単位 | 10口 |
| 分配金支払い基準日 | 毎年2月、5月、8月、11月の各10日 |
| 信託報酬の基本料率 税込年率 | 商品ページ表示0.1705%。交付目論見書では0.1705%以内 |
| 貸付を行う場合の追加条件 | 品貸料の44% 税込 以内を信託報酬に加算する規定 |
| 今回確認した総経費率 税込年率 | 0.21%。集計期間は2026年2月11日〜8月10日 |
出典:1343の商品情報、2026年7月16日使用開始の交付目論見書の9〜10ページ。商品ページを10月28日に確認しました。分配金支払い基準日は、口座への入金日ではありません。実際の支払開始日・着金日は別に確認します。分配時期・分配額は保証ではなく、各条件は取引前に最新資料で再確認します。
ETFを通じて複数のREITに分散しても、国内不動産にまとめて投資する性質は残ります。また、指数は各銘柄を均等に組み入れるものではありません。保有済みの個別REITや投信と重ならないか、組入一覧も確認してください。1343の商品ページの組入銘柄情報
個別REITを直接持つと費用がゼロになる、という比較も適切ではありません。 投資法人は運用会社などへ報酬を支払い、それ以外にも不動産運営や借入に費用がかかります。ETFでは、それらの投資口を保有するファンド側の費用も確認します。個別REITの運用報酬とETFの信託報酬を、同じ分母の単純な料率比較にしないようにします。資産運用業協会のJ-REITのコスト
信託報酬と総経費率を足すと、同じ費用を重ねて数えるおそれがあります。総経費率も費用のすべてではなく、上の総経費率には原則としてファンド内の売買委託手数料や有価証券取引税が含まれません。自分が証券会社に支払う売買手数料や売り気配・買い気配の差も別に考えます。投資対象のREITの費用が、ETFの表示料率にすべて含まれているとも考えないでください。1343交付目論見書の費用説明、野村アセットマネジメントの総経費率一覧
ETFの市場価格と基準価額の差は、個別REITの鑑定NAV倍率とは別に確認します。1343の公式ページに表示された同日の値で、単位をそろえると次のようになります。
| 2026年10月28日の確認例 | 数値 |
|---|---|
| 取引所終値 1口 | 1,808円 |
| 基準価額 100口 | 180,872円 |
| 1口に換算した基準価額 | 1,808.72円 |
| 終値の基準価額に対する差 | 約−0.040% |
| 上記終値で10口買う場合の代金 | 18,080円 売買手数料を含まない |
計算式は「(1,808÷1,808.72−1)×100」です。1343公式商品情報。特定日の終値による事後的な例で、現在の注文価格でも、この条件で買えるという約束でもありません。基準価額より安いことだけで利益が確定するわけではなく、注文時には売り気配・買い気配、数量、利用できるiNAVの更新時刻を確認します。
資料の確認から売却後の出金まで
1. 追加する理由を決める。 いまの資産に不動産をどの程度加えるのか、個別REITを選ぶ理由があるかを整理する。保有済みの投信に含まれるREITも合算する。
2. 公式資料の日付をそろえる。 決算短信・説明資料で分配実績と財務を確認し、資産運用報告・有価証券報告書で物件やリスクを読む。決算後の予想修正、資産売買、借入、投資口分割も確認する。日付の違う数値を「現在」と一括しない。
3. 口座と取引条件を確認する。 利用する証券会社で候補銘柄を扱っているか、現物取引の費用、入金方法、出金条件、問い合わせ先を確認する。すでに必要な条件のそろう口座があれば、新しい口座を増やすことを前提にしない。
4. 注文画面の対象を確かめる。 正式名称・コード、現物取引、売買単位、口数、概算代金、口座区分を確認する。個別の上場REITは通常1口単位、例示した1343は10口単位。同じ単位だと思って数量を入力しない。
5. 価格と成立条件を決める。 板の価格差と注文数量を見て、許容する買値を決める。指値は成立を保証せず、成行は価格を指定しない。気配が薄い、資料の疑問が解消できないときは見送る。
6. 注文後は約定と受渡しを確認する。 注文受付だけで購入済みと考えず、約定数量・価格・手数料・残注文を確認する。通常の取引は約定日を含めて3営業日目が受渡日。休業日をまたぐ場合は証券会社の表示で確かめる。
7. 保有中は分配の原資と変化を確認する。 決算と予想修正、テナント退去、借換え、災害などを確認する。分配金を使うか、現金で残すか、再投資するかを決める。分配金の受取額だけで総損益を判断しない。
8. 売却から銀行への着金まで分ける。 売却する銘柄・口座区分・口数・注文条件を確認し、約定後に受渡日と出金可能額を見る。必要なら登録銀行への出金指示を行い、銀行への着金を確認する。売却成立と、その日の銀行出金は同じではない。
資料の役割は資産運用業協会の開示資料解説、取引と受渡しはJPXのREIT売買制度と普通取引の説明、REITの1口単位はみずほ証券の商品説明を参照。取引単位は候補銘柄の最新表示を優先し、証券会社独自の小口サービスを通常の取引所注文と混同しないでください。
NISAを使う場合は、対象商品・枠・受取方法を別に確認します。国内上場のREITやETFの分配金について非課税扱いを受けるには、株式数比例配分方式の確認が必要です。利益超過分配の扱いも一律ではありません。詳しくは商品とNISAと証券会社の役割と、国税庁のNISA説明、発行体・証券会社の案内を確認してください。
買う前に説明できる状態を目指す
個別REITを候補に残すなら、どの用途・地域に集中し、どの収入から分配し、金利上昇や借換えにどう影響されるかを自分の言葉で説明できるか確かめます。調べる負担を減らしたいならETFや投信との比較へ戻り、不動産の比率を増やす必要がなければ追加しない選択も残します。
利回りやNAV倍率は、問いを見つけるための数字です。数字が一つ高い、または低いことだけで購入を決めず、費用と価格変動、売却・出金までを一続きで確認しましょう。
実物と投資口の入口を見直すときは、不動産分野のページへ戻れます。
本記事は一般的な金融教育のための説明です。特定の物件・銘柄・証券会社の利用や売買を勧めるものではありません。元本・分配金は保証されず、過去の実績や会社予想は将来の成果を保証しません。商品条件と制度は取引前に最新の公式資料で確認してください。