「価格が10%上がった」「利益は2万円だった」。どちらも結果を表す数字ですが、知りたいことは少し違います。いくら分を持っていたか、途中で収入があったか、費用をいくら払ったかによって、手元の増減は変わります。

この記事では、値動きから損益金額を求め、分母を決めて損益率を読む順に整理します。以下の数字はすべて説明用の架空例です。利益や配当にかかる税金は計算に含めず、利益や損失の見込み、取引可能な条件を示すものではありません。

最初に値動きを金額へ直す

同じ数量を買い、その後すべて売る単純な取引なら、値動きによる売買損益は「売値と買値の差×数量」で求められます。

1株2,000円の株式を100株購入し、1年後に1株2,200円で売ったとします。途中の追加購入・一部売却はありません。買付代金は20万円、売却代金は22万円、価格差による利益は2万円です。価格の上昇率は、200円÷2,000円=10%となります。

ただし、100株を持った場合と10株を持った場合では、上昇率が同じでも利益額は違います。「何%動いたか」と一緒に「いくら分がその値動きを受けたか」を見ることが出発点です。

まだ売っていない場合は、現在価格で評価した含み損益です。実際にその価格で売れることや、表示額のまま口座に入金されることを保証する数字ではありません。

受け取ったお金と払った費用を加える

先ほどの株式で、保有中の配当金が3,000円、購入時と売却時の手数料が各500円だったとします。配当は現金で受け取り、再投資しない前提です。

価格差の利益2万円に配当3,000円を加え、往復の手数料1,000円を引くと、税引前の利益は2万2,000円です。手数料はこの例で負担する税込額として扱い、ほかの費用はないものとします。

支払額と受取額からも確かめられます。最初の支払いは買付代金20万円と手数料500円で20万500円。受取額の合計は、売却代金22万円から売却手数料500円を引き、配当3,000円を加えた22万2,500円です。差額は同じ2万2,000円になります。

図1 値上がりから手元の利益まで

架空例

  1. 売買差益+20,000円
  2. 配当金+3,000円
  3. 購入手数料-500円
  4. 売却手数料-500円
  5. 税引前利益=22,000円
初期支払額
200,500円
初期支払額に対する損益率
約10.97%
価格上昇率
10%

1年間の架空例。2,000円×100株で購入し、2,200円×100株で売却。配当は再投資しない。手数料は税込負担額。その他費用と、利益や配当にかかる税金は含めない。

投資信託なら分配金も確認します。ただし、分配金には投資元本の一部の払戻しに相当する場合があり、受取額の多さだけで運用成績は判断できません。価格・基準価額の変化と合わせて全体の増減を見ます。日本証券業協会の分配金の説明が参考になります。

損益率は何を分母にしたかまで読む

損益率を出すときは、どの金額に対する割合かを明らかにします。先ほどの例で、購入手数料を含む最初の支払い20万500円を分母にすると、2万2,000円÷20万500円×100で、約10.97%です。

価格だけの上昇率10%とは、含めた収入と費用、分母が違います。どちらかが誤りなのではなく、表しているものが異なります。「1年間・税引前・売買費用と配当込み・初期支払額に対する割合」と条件を添えると、比較しやすくなります。

途中で積立や出金をした場合は、その金額と時期も必要です。口座残高が増えた分を、すべて運用益と数えることはできません。運用成績の計算方法には複数あり、入出金のある口座をこの単純な例と同じ式で比較しないようにしましょう。

購入代金と証拠金を区別する

現物を自己資金で買う場合、買付代金は購入する資産の代金です。証拠金取引では、差し入れる証拠金を担保として、それより大きな額の値動きを受けることがあります。口座へ入れた金額だけを見ると、この違いを見落とします。

ここで、自己資金20万円で20万円分の資産を持つ場合と、証拠金20万円で100万円相当の買い建玉を持つ場合を比べます。後者は取引開始時の額で見て5倍の関係です。説明を単純にするため、価格変化に比例して損益が生じ、数量は一定、費用・金利・為替・途中決済はないものとします。

価格が5%下がると、前者の損失は1万円、後者は5万円です。最初の自己資金20万円に対する割合は、それぞれ5%と25%になります。5%上がった場合の利益もそれぞれ1万円と5万円です。レバレッジは、損失側にも同じように作用します。

図2 同じ20万円でも値動きを受ける額が違う

架空例

自己資金で現物購入

初期自己資金
200,000円
取引開始時の対象額
200,000円
対象額÷初期自己資金
1倍
価格+5%時の損益
+10,000円
初期自己資金に対する利益率
+5%
価格-5%時の損益
-10,000円
初期自己資金に対する損失率
-5%

証拠金を使う買い建玉の計算例

初期自己資金・預託証拠金
200,000円
取引開始時の対象額
1,000,000円
対象額÷預託証拠金
5倍
価格+5%時の損益
+50,000円
初期預託証拠金に対する利益率
+25%
価格-5%時の損益
-50,000円
初期預託証拠金に対する損失率
-25%

架空の感応度計算。数量一定で価格変化に比例する損益を仮定し、費用・金利・為替・途中の追加入金・強制決済を除外。商品の取引可能条件、実際の価格推移、最大損失を表すものではありません。

これは仕組みを切り分ける計算で、実際に同じ資産をこの条件で取引できるという意味ではありません。必要証拠金と実際に預けた金額も区別します。追加で入金した場合や建玉が増えた場合は、割合の前提も変わります。日本証券業協会の証券CFD解説も、証拠金と取引額の関係を説明しています。

ロスカットがあっても損失の上限は保証されない

証拠金や保証金を使う取引では、評価損や担保不足により、追加資金が必要になったり、取引を強制的に終了されたりすることがあります。信用取引の追い証とFX・CFDのロスカットでは、条件や手順が異なるため、同じルールだと思わないようにします。

ロスカットは損失の拡大を抑えるための仕組みですが、相場の急変などで予定した水準で決済できず、預けた証拠金を超える損失が生じることがあります。「自動で止まるから、最初に入れた額までしか失わない」とは言えません。金融先物取引業協会の説明で、この点が明示されています。

先ほどの5%の例は最大損失を示していません。また、強制決済されれば、その後に価格が戻っても、その建玉を持ち続けて回復を待つことはできません。

費用は二重に引かず 抜かさずに数える

費用には、売買時に直接払う手数料、保有中の信託報酬、借入金利などがあります。保有期間が長くなるほど増える費用もあるため、同じ値動きでも1日で決済した場合と1年持った場合では結果が変わります。

投資信託の基準価額は、信託報酬などを差し引いた純資産額から計算されます。その基準価額を使って損益を計算するなら、すでに反映された信託報酬をもう一度引かないようにします。一方、購入時に自分が別途払った手数料は、手元の損益に含めて確認します。資産運用業協会の基準価額の説明と費用一覧が参考になります。

FXなどの売値と買値の差であるスプレッドも、実際の売買価格に反映されます。実際の約定価格で求めた損益から、同じスプレッドを再び引く必要はありません。FXのスワップポイントやCFDの調整額は、受取りだけでなく支払いになる場合もあり、保有中の合計を確認します。

為替と期間をそろえて比較する

外貨建て資産は、現地通貨での成績と円換算の成績が異なります。架空例として、100ドルの資産を1ドル150円で購入し、110ドルのときに1ドル135円で売ったとします。費用・配当・税金を除くと、購入時は1万5,000円、売却時は1万4,850円で、円では150円の損失です。

ドル建ての価格は10%上がっていますが、円換算では1%下がっています。10%の値上がりと10%のドル安を単純に足してゼロとせず、1.1×0.9=0.99と掛け合わせて考えます。為替ヘッジがある商品は、その仕組みや費用も別途確認します。

最後に期間です。1か月で10%増えた結果と、5年間で10%増えた結果は同じ条件ではありません。短い期間の利益を単純に引き延ばし、同じ成績が続く前提で将来額を計算するのも避けたいところです。

次に確かめることは、見かけた損益率に「期間・分母・費用・通貨・税引前後」を書き添えることです。条件が分からない数字は、まず計算の前提から確認してみましょう。

※一般的な金融教育のための説明です。特定の商品・取引を勧めるものではありません。計算例は税務申告用の損益計算ではなく、個別の税制や契約条件は別途確認してください。

参照資料