「円安になったから、FXでは利益が出る」。この説明だけでは、口座の損益は分かりません。どの通貨の組合せを、買いと売りのどちらから始め、何通貨分持っていたかによって結果が変わるからです。
共通記事では取引額と損益の関係を整理しました。ここでは米ドル/円を中心に、ニュースの為替レートを実際の計算につなぎます。数値はすべて架空で、相場予測や取引条件の提示ではありません。利益への税金は計算に含めません。
共通の開始時:Bid 150.00円/Ask 150.02円。各ケースの数量は1,000米ドル。
買いから開始
- 売買の流れ
- Askで新規買い → Bidで決済売り
- 終了時 ドル高・円安
- Bid 151.00円/Ask 151.02円 → +980円(利益)
- 終了時 ドル安・円高
- Bid 149.00円/Ask 149.02円 → −1,020円(損失)
売りから開始
- 売買の流れ
- Bidで新規売り → Askで決済買い
- 終了時 ドル高・円安
- Bid 151.00円/Ask 151.02円 → −1,020円(損失)
- 終了時 ドル安・円高
- Bid 149.00円/Ask 149.02円 → +980円(利益)
架空例。各ケースは独立した取引。2つの建玉の同時保有を示しません。顧客から見た売買です。
価格差による損益のみ。約定価格にスプレッドは反映済み。スワップ、別途手数料等、利益への税金を含めない。途中の強制決済はない仮定。
1 通貨ペアの左側を買うのか売るのか
米ドル/円は、USD/JPYとも表示されます。「1ドル=150円」は、1米ドルに対応する円の額です。150円から151円へ動けば、同じ1ドルを得るのに必要な円が増えるため、ドル高・円安です。149円へ動けばドル安・円高になります。
FXで米ドル/円を「買う」とは、米ドルを買い、円を売る方向の取引です。「売る」なら、米ドルを売り、円を買う方向です。未決済の取引を建玉、またはポジションと呼びます。買い建玉では米ドル/円の上昇が、売り建玉では下落が、価格差による利益につながります。金融先物取引業協会の通貨ペアの解説で、売買方向を確認できます。
円安・円高は、必ず相手の通貨を伴う言葉です。円がドルに対して下がっても、ユーロに対して同じ割合で下がるとは限りません。まず「何に対する円の動きか」と「自分の売買方向」をそろえましょう。
2 数量と実際の売買価格から金額を出す
取引画面には通常、こちらが売れる価格のBidと、買える価格のAskが表示されます。Offerという表記もあります。その差がスプレッドです。以下は、開始時のBidが150.00円、Askが150.02円という架空の条件です。
米ドル/円を1,000米ドル買い、後で151.00円で売って決済できた場合、価格差による利益は次のようになります。
(決済時の売値151.00円 − 新規の買値150.02円)× 1,000米ドル = 980円
同じ開始時点で1,000米ドルを150.00円で売り、後で151.02円で買い戻した場合は、反対の結果です。
(新規の売値150.00円 − 決済時の買値151.02円)× 1,000米ドル = −1,020円
同じドル高・円安でも、売りから始めた取引には損失が生じています。逆に、終了時のBidが149.00円、Askが149.02円なら、買い建玉は1,020円の損失、売り建玉は980円の利益です。
数量が1万米ドルなら、同じ価格差の損益は10倍になります。「1ロット」「1枚」が何通貨を指すかは取引条件で確認し、計算では通貨数量へ直します。金融先物取引業協会の決済の解説も、価格差と通貨数量で示しています。
先ほどの式は、スプレッドを含む実際の約定価格を使っています。そこから同じスプレッド分をもう一度引くと、費用を二重に数えます。一方、画面の参考レートで計算した場合には、実際の約定価格との差が残ります。スプレッドは相場急変時などに広がることがあり、表示価格での成立も保証されません。スプレッドと手数料の説明で確認できます。
3 スワップを足しても為替の損失は消えない
FXでは、二つの通貨の金利差などを反映したスワップポイントの受払いがあります。建玉の決済日を繰り延べる際に発生し、金額や付与日数は通貨ペア、売買方向、取扱会社、日付によって異なります。今日の1日分を単純に365倍しても、将来の受取額にはなりません。
米ドル/円の買い建玉について、保有期間中のスワップ合計が80円の受取り、別途請求される売買手数料等の合計が税込100円だったと仮定します。先ほどの980円の利益に加減すると、税引前損益は960円です。
980円 + 80円 − 100円 = 960円
売り建玉の例で、スワップ合計が100円の支払い、別途手数料等が100円なら、−1,020円 − 100円 − 100円で、損失は1,220円になります。買いと売りのスワップは、必ず同じ額の符号違いになるとは限りません。
スワップは預金の確定利息ではありません。金利や市場環境で変わり、受取りが支払いに転じる場合もあります。受取スワップがあっても、為替による損失がそれを上回れば全体では損失です。金融先物取引業協会のスワップ解説と金融庁の注意点が参考になります。
4 口座残高と今の評価を分けて見る
口座への入金を5万円とし、ほかの取引や入出金がなく、前節の買い建玉をすべて決済したとします。スワップや費用の受払いもすべて反映された後なら、口座のお金は5万960円です。売り建玉の例なら4万8,780円になります。
買いの独立した例
- 初期入金
- 50,000円
- 価格差損益
- +980円(利益)
- スワップ合計
- +80円
- 別途手数料等
- −100円
- 全決済・受払反映後
- 50,960円
- 税引前損益
- +960円(利益)
売りの独立した例
- 初期入金
- 50,000円
- 価格差損益
- −1,020円(損失)
- スワップ合計
- −100円
- 別途手数料等
- −100円
- 全決済・受払反映後
- 48,780円
- 税引前損益
- −1,220円(損失)
同じ円安シナリオの独立した架空例。保有期間中のスワップ合計を仮定し、日数・年率への換算はしない。
別途費用100円は税込の支払総額。ほかの取引・入出金・費用はなく、利益への税金は計算に含めない。残高計算の例であり、推奨証拠金額や出金可能額を示さない。
決済前には、口座残高のほかに含み損益が表示されます。たとえば残高が5万円と表示されていても、建玉に8,000円の評価損があれば、残高の数字だけで現在の状態は分かりません。スワップや費用の反映時期も確認します。
証拠金の状況を読むときは、評価損益などを加味した額、建玉を維持するために必要な額、出金できる額を区別します。「純資産」「有効証拠金」「余力」などの名称と計算範囲は、各画面の説明で確かめてください。表示された余力は、そのまま損失を負ってよい予算を意味しません。金融先物取引業協会の証拠金規制の解説でも、預託額と評価損益、必要な証拠金を分けています。
預けた5万円は、損失の上限でもありません。評価損や証拠金不足によって追加資金が必要になったり、建玉を強制決済するロスカットが行われたりします。相場が飛ぶ、スプレッドが広がる、判定から執行までに価格が動くといった場合には、預けた証拠金を超える損失も生じます。金融先物取引業協会のロスカット解説でも、一定額への損失限定を保証しないと説明されています。
5 円を含まない通貨ペアには換算が加わる
ユーロ/米ドルなど、円を含まない組合せでは、まず価格の表示通貨で損益を計算します。架空例として1万ユーロを1ユーロ=1.1000米ドルで買い、1.1100米ドルで売ると、価格差は100米ドルの利益です。
これを仮に1米ドル=145円で円に換算すれば1万4,500円ですが、実際の円額は契約で定める換算レートや時点、費用によります。米ドル/円の例のように、価格差と数量を掛けた結果が最初から円になるとは限りません。
口座の数字を読む際は、「通貨ペア」「売買方向」「通貨数量」「新規と決済の約定価格」「スワップ・費用」「損益の通貨」を一つの取引に対応させます。決済前なら、さらに評価に使う価格と強制決済の条件を確認します。円安・円高という見出しから、この計算の中身へ進むことが、損益を理解する入口です。
※一般的な金融教育のための説明です。特定の通貨、売買方向、取引数量、証拠金額を勧めるものではありません。架空例は最大損失や、実際に取引できる条件を示しません。
参照資料
一次資料確認日:2026年10月18日