投資信託を一つ増やしたら、投資先も広がったように感じるかもしれません。ただ、商品名や運用会社が違っても、中で保有する株式が同じことがあります。世界の株式に投資するファンドと、特定の国や業種に投資するファンドを組み合わせれば、その国や業種の割合が増える場合もあります。
確認したいのは本数に加えて、自分のお金が最終的にどこへ、どれくらい向かっているかです。ここでは「対象資産と持ち方を分けて考える」の続きとして、投資信託やETFの組入資産を読む方法を見ていきます。
ファンドA|保有評価額60万円
- 甲社 30%
- 乙社 20%
- 丙社 25%
- 丁社 25%
ファンドB|保有評価額40万円
- 甲社 40%
- 乙社 30%
- 戊社 30%
| 銘柄 | Aから | Bから | 合計 |
|---|---|---|---|
| 甲社 | 18 | 16 | 34 |
| 乙社 | 12 | 12 | 24 |
| 丙社 | 15 | 0 | 15 |
| 丁社 | 15 | 0 | 15 |
| 戊社 | 0 | 12 | 12 |
| 合計 | 60 | 40 | 100 |
共通2銘柄の合計58万円/全体100万円
異なる投資先は5社
架空例。同一日の評価額。株式のみ・現金負債デリバティブなし。実在商品や推奨配分ではありません。
各棒の長さは100%。保有金額60万円・40万円の大きさを棒の面積で比較するものではありません。
58%は共通する銘柄に向かう保有額の割合です。分散効果や損失確率を測る指標ではありません。
1. 方針を読む資料と実際の中身を見る資料をそろえる
最初に、運用会社の公式サイトで交付目論見書を開きます。「ファンドの目的・特色」で投資対象、対象地域、連動を目指す指数の有無、為替ヘッジの方針を確認しましょう。似た名前でも、対象や仕組みが違う場合があります。
次に、月次レポートや運用報告書で、実際に何を持っているかを見ます。目論見書に書かれた方針と、ある時点の組入状況は分けて読みます。資産運用業協会の目論見書ガイドは投資対象や仕組みの確認に、運用報告書ガイドは運用後の状況を読む際に役立ちます。
資料には基準日も書き添えます。片方が先月末、もう片方が半年前なら、同時点の正確な比較にはなりません。全銘柄が載る資料と、上位銘柄だけの資料の違いにも注意します。ETFも公式資料で対象と組入資産を確認できますが、開示される内容や頻度は商品によって異なります。
2. 組入比率に自分の保有額を掛ける
架空の投資信託「ファンドA」を60万円、「ファンドB」を40万円持つ例を考えます。金額は同じ日の評価額です。両方とも株式だけを持ち、現金・負債・デリバティブはないものとします。少数銘柄に単純化した説明用モデルであり、実在商品の構成や推奨配分ではありません。
ファンドAの中身は、甲社30%、乙社20%、丙社25%、丁社25%。ファンドBは、甲社40%、乙社30%、戊社30%です。
甲社は両方に含まれています。自分の保有額から見る甲社相当額は、次のように計算できます。
60万円 × 30% + 40万円 × 40% = 34万円
乙社も同様に、60万円 × 20% + 40万円 × 30% = 24万円です。残りは丙社15万円、丁社15万円、戊社12万円となり、合計は100万円です。
2本の共通銘柄である甲社・乙社には、合わせて58万円、全体の58%が向かっています。ファンドAの4銘柄とファンドBの3銘柄を足しても、異なる投資先は7社ではなく5社です。この58%は「共通する銘柄に向かう保有額の割合」で、分散効果や損失確率を測る指標ではありません。
また、30%と40%を足して「甲社が70%」とは計算できません。分母がそれぞれのファンドだからです。自分が保有する金額で重みを付け、全体の100万円に対する割合へ直すと34%になります。購入額から値上がり・値下がりしている場合は、比較する日の評価額を使います。
3. 同じ金額を地域と業種でも並べ直す
続いて、甲社と乙社を米国の情報技術企業、丙社を日本の資本財企業、丁社を欧州のヘルスケア企業、戊社を米国のヘルスケア企業と設定します。これは説明用の分類です。
銘柄別の金額を地域でまとめると、米国は34+24+12=70万円、日本は15万円、欧州は15万円です。業種では情報技術が58万円、ヘルスケアが27万円、資本財が15万円になります。
地域別|合計100万円
- 米国70万円 70%
- 日本15万円 15%
- 欧州15万円 15%
業種別|合計100万円
- 情報技術58万円 58%
- ヘルスケア27万円 27%
- 資本財15万円 15%
分類の対応
- 甲社・乙社
- 米国・情報技術
- 丙社
- 日本・資本財
- 丁社
- 欧州・ヘルスケア
- 戊社
- 米国・ヘルスケア
架空例。各棒の合計は100万円。同じ保有資産を別の切り口で集計しています。二つの棒の合計を足しません。
70%と58%は集計結果であり、危険・安全の閾値ではありません。
商品としては2本、投資先としては5社でも、地域では米国70%、業種では情報技術58%です。ファンド名から受けた印象と、集計した割合が合っているかを確認できます。地域別と業種別は同じ100万円の別の見方なので、二つの表を足し合わせることはしません。
実資料では、国・地域を何に基づいて分類しているか、業種の区分が同じかも確認します。企業の国籍と、売上を得る地域は必ずしも一致しません。また、地域の割合だけで為替の影響は分かり切りません。投資先の通貨や為替ヘッジの有無を、別の欄で確かめます。
4. 上位銘柄だけでは分からない部分を残す
月次レポートに上位10銘柄だけが載っている場合、そこに同じ会社が見つかれば、その範囲の重なりは確認できます。ただし、残りにも共通銘柄があるかもしれません。上位に同じ名前がないことだけで、重複なしとは判断できません。
組入比率の分母にも注意しましょう。「純資産総額に対する比率」と「株式部分の中での比率」は異なります。たとえば株式がファンド全体の80%で、その株式部分の10%が甲社なら、全体に占める甲社の比率は8%です。比率が合計100%にならないときは、現金、負債、集計範囲、端数処理などの注記を読みます。
別の投資信託を通じて運用する場合は、もう一段先を見ます。ファンドの80%がマザーファンドで、その中の10%が甲社なら、単純化した計算では甲社は全体の8%です。「マザーファンド80%」と「甲社8%」を別々の資産として足すと二重計上になります。
デリバティブやレバレッジを使う商品では、保有額に銘柄比率を掛けるだけで価格変動への実質的な影響を捉えられない場合があります。ETFでは市場価格と基準価額のずれにも注意が必要です。仕組みが異なる商品へ、先ほどの単純な計算をそのまま当てはめないようにします。JPXの運用方法の説明や価格のずれに関する説明も確認できます。
5. 重なりを見つけた後はその理由を確かめる
共通銘柄があることだけで、保有が不適切とは決まりません。特定の地域や業種の割合を意図して増やしている場合もあります。確認したいのは、その重なりを把握しているか、自分が考えていた配分と合っているかです。
反対に、銘柄が違っていても、同じ景気や金利の変化で一緒に値下がりすることがあります。金融庁が説明する分散投資も、値動きの異なる複数の資産を組み合わせる考え方です。本数や銘柄の重複だけから、分散効果や将来の値動きが確定するわけではありません。
実際に整理するときは、まず2本の資料で「基準日」「投資対象」「組入上位銘柄」「比率の分母」を書き出してみてください。そのうえで共通銘柄を一つ計算し、地域や業種でも偏りを確かめます。分からない部分は推測で埋めず、「この資料では確認できない」と残すことも、資料を読むうえで大切です。
※一般的な金融教育のための説明です。特定の商品、売買、資産配分を勧めるものではありません。架空例は仕組みの説明用で、損失の上限や将来の成果を示しません。
参照資料
一次資料確認日:2026年10月18日